
場面緘黙(ばめんかんもく)とは
場面緘黙(Selective Mutism) は、「特定の状況(例:家庭)では話せる一方で、他の社会的状況(例:学校)では一貫して話すことができない」という状態のことで、米国の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)および 国際疾病分類(ICD-11)では、不安症に分類されています。
また、硬直して動けなくなる「緘動」を伴ったり、家庭や学校を問わず話せない「全緘黙」の状態の人もいます。
DSM-5の診断基準
A.他の状況で話しているにもかかわらず,話すことが期待されている特定の社会的状況(例:学校)において、話すことが一貫してできない。
B.その障害が学業上、職業上の成績、または対人的コミュニケーションを妨げている。
C.その障害の持続期間は,少なくとも1 カ月(学校の最初の1 カ月だけに限定されない)である。
D.話すことができないことは、その社会的状況で要求されている話し言葉の知識や、言語に感じる快適さの不足によるものではない。
E.その障害は,コミュニケーション症(例:小児期発症流暢症)ではうまく説明されず,また自閉スペクトラム症,統合失調症,または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではない。
場面緘黙の特徴の例
場面緘黙は人見知りや性格、発達障害によるコミュニケーションの不得意とは別のものとして区別されています。
子どもの頃に学校で話せなくなるのが典型的ですが、人によって話せる状況・話せない状況は異なるようです。
また、大人になっても場面緘黙が継続していたり、後遺症や二次障害に悩む人もいます。
症状の現れ方や困難に感じることは人によってさまざまですが、ここで挙げているのはそのうちいくつかの例です。

特定の状況では普通に話せるが、別の状況ではまったく話せなくなる

固まったように動けなくなる「緘動(かんどう)」を伴うこともある

あいさつや発表、自己紹介なども一貫してできない場合がある。喉が締まったような感じになる

周囲の視線が 気になったり、社交不安症を併発している人の割合が多い

大人になってからも後遺症で雑談に苦手意識を感じたり、3人以上の会話に入れなくなる
場面緘黙に関連した症状
場面緘黙と混同されやすい、もしくは場面緘黙と併発している人の割合が多いものに、以下のような症状があります。
自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症は発達障害の一種で、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群に属しています。
社会的なコミュニケーションやふるまい、関係を維持することの困難、こだわりの強さ、感覚過敏/鈍麻、動作の不器用さなどが特徴として挙げられています。


場面緘黙との類似点
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会話やコミュニケーション上の困難がある
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表情による感情表現がしづらい
場面緘黙との相違点
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DSM-5では場面緘黙は「不安症群」、ASDは「神経発達症群」に分類される
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場面緘黙のように「特定の状況で一貫して話せない」という特徴はない
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場面緘黙の原因ははっきりしておらず、ASDは遺伝が主な要因として考えられてる
社交不安症(SAD)
社交不安症は、他の人から見られる状況で顕著な恐怖や不安を感じることを特徴とした症状で、「会議」「人前で食べること」「人前で書くこと」「スピーチ」「3人で居合わせる状況」「雑談をする状況」などの状況が挙げられます。
恥をかいたり否定的な評価への恐れを感じるのがこの症状の特徴で、DSM-5では場面緘黙と同じく不安症の一種として分類されています。


場面緘黙との類似点
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特定の相手や場面で顕著な不安や恐怖を感じる
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場面緘黙と同じく「不安症群」に分類される
場面緘黙との相違点
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場面緘黙のように「特定の状況で一貫して話せない」という特徴はない
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「赤面」「発汗」「早口になる」など、場面緘黙とは異なる特徴がある
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場面緘黙の方が早期に発症しやすい(社交不安症は平均年齢13歳、場面緘黙は2~5歳頃の発症が多い)